おととい道を歩いていて、飼い主に連れられ向こうからハフハフいって歩いて来る犬に目が釘付けになった。実家にいた、死んだ愛犬のジャムに生き写しだったからだ。
血統書付きの犬なら似ているのがいてもおかしくないけれど、ジャムはノラ出身の雑種だ。拾ったとき、オフクロがオオカミかと疑ったくらい、かなり変わった容貌の犬で、日本でも似た犬を見たことがなかった。それなのに、遠い異国のニューヨークの街角で、体型も表情も振る舞いもそっくりな犬を見かけるとは、シュールな感覚だった。
ジャムはまだノラ犬だったとき、乳飲み子が4匹もいた。自分はガリガリにやせ細っているのに、赤ちゃんはみんな丸々太っていた。当時妊娠中でお腹の大きかった姉がそれを目撃し、彼女の母性に打たれて、なんとかしたいと涙ながらに言い出したのが、子犬たちもろともウチで取り敢えず引き取るきっかけになった。すでに保健所に通報した人がいたので、ぐずぐずしている余裕はなかった。
子犬たちは小さくて可愛かったので、瞬く間に引き取り手がみつかった。でも、食いしん坊でガサツで大柄なジャムだけは、ウチに残った。そして平々凡々に暮らした。
そのジャムも数年前、老衰で静かに息を引き取った。アイスの棒だろうが何だろうが、食べ物の臭いのするものなら何でもガバガバ食べてしまう、ノラ犬暮らしで身に付いたであろう悲しい癖は、ついに最期までぬけなかった。
そのジャムに似ている犬がこの街にいるというだけで、なぜか心が温まる。今度会ったときには、ちゃんと挨拶をしたい。
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