森達也さんが、連載中の『リアル共同幻想論』で、拙作『選挙』などを素材に公職選挙法について論じている(僕との会話もちょっと出てる:森ファンとしては、何となく嬉しい)。
http://diamond.jp/series/mori/10026/
公職選挙法の問題を、共同幻想という視点から論じたのは、森さんらしい鋭い視点だと思う。公職選挙法自体も矛盾だらけの悪法だけれど、それと同じくらい問題なのは、それに抵触するのを恐れて、何もかも自主規制してしまう日本人なのではないか。
記事によると、森さんが特定の候補者を応援しているという理由だけで、あるテレビ局は森さんの出演をキャンセルしたという。これは、放送局が法解釈を厳密に行ったというわけではなく、ちょっとでも危険性があることは念のためにやめておこうという、過剰な安全策に過ぎないと思う。(もしくは、政治的な意図を疑ってしまう。)それは、道ゆく人やら看板やら、何でもかんでもモザイクをかけてしまうのと同じ心理であり、まさに共同幻想である。
実は、『選挙』を07年に日本公開する際、参議院選挙にぶつけてロードショーをしたかったので、僕らも公職選挙法との兼ね合いについては随分と心配をし、弁護士にも相談した。弁護士の答えは、合法だけれども、警察のさじ加減ひとつで問題視したりしなかったりするので、100%は太鼓判を押せない、という趣旨だったと記憶している。まあ、この時点で、たいていの放送局や配給会社なら「じゃあ、やめておこう」と思うのだろう。
けれども、『選挙』は特定の候補者や政党を応援しているわけでも、批判しているわけでもない。筋論から言えば、問題があるはずがないのである。
僕らは、「お上」から難癖がついたら、その是非を世論に問いかけ、社会問題化させてしまおうと腹をくくった。そしたら客も入るし(笑)。それがこじれて上映中止になったり、逮捕者が出たりするなら、それも面白いじゃないか。そう考えて、公開に踏み切った(ちなみに弁護士によると、逮捕されるとしたら、それは映画の作り手ではなくて映画館主など興行側だそうです 笑)。覚悟してからは、問題化することを半ば心待ちにした。
結局、残念ながら?お上からは警告も何も来なかった。
その『選挙』、ただいま復活ロードショー中です。もちろん、選挙期間中も上映しています(笑)。
http://www.laboratoryx.us/campaignjp/screenings.html
森さんの意見早速拝見しました。日本ではいつごろから「自主規制」が始まったでしょうね。そんなに古い話では(私から見れば)無かったような気がしますが、最近は更に「個人情報保護」なる規制が掛かって世の中萎縮してしまいましたね。事なかれ主義というのはいつの世にもありますが、報道に関しては勇気を持って真実を知らせ、自ら正しいと思う事は主張してほしいと思います。選挙に関して言えば、「選挙管理委員会」って一体誰が委員をやってるのか?誰が任命するのか?常に存在しているものなのか?よく考えたら何も知らない事に気づきました。
ReplyDeletemimiさん
ReplyDeleteおっしゃる通りですね。しかし、自主規制が厳しい世の中だからこそ、僕らインディーにとっては、自主規制しないことの意味も大きくなるわけで、やりがいもでてきます。