NEWS

Latest documentary "Oyster Factory" has been officially invited to Locarno International Film Festival 2015! 最新作『牡蠣工場』がロカルノ国際映画祭へ正式招待されました!

Tuesday, May 13, 2014

鼻血問題についての広河氏の見解

チェルノブイリの取材などで知られる広河隆一氏の見解が届きました。拡散してくれとのメールをいただきましたので、ブログでシェアします。

僕(想田)はどう思うかと申しますと、低線量被曝で鼻血が出るものなのかどうかについては、専門的知識を有していないので分かりません。

ただ、気になるのは、「低線量被曝で鼻血が出るわけがない」という主張が「科学」の名の下に行われていることです。もし広河さんのいうように福島やチェルノブイリで鼻血が増えたのなら、「なぜだろう?」と探求することこそが「科学的」なのではないでしょうか。結論先にありきなのは、科学ではありません。

水俣病と有機水銀の関係性が否定され、約10年も患者が放置されたのも、科学の名の下によってでした。その教訓を忘れてはなりません。

ーーーーー以下、広河氏の見解ーーーーー

2014年5月13日 株式会社デイズジャパン

「チェルノブイリ子ども基金」前代表広河隆一

チェルノブイリでは避難民の5人に1人が鼻血を訴えた
2万5564人のアンケート調査で判明


 『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に掲載中の漫画「美味しんぼ」の「福島の真実」篇に多方面からの抗議が寄せられているという。問題になったのは次の2点である。

 ・原発を訪れた主人公が鼻血を出すシーン
 ・そして疲労感を訴えるシーン

特に鼻血が「ありえない」「不安をあおる」といった抗議を受けた。

疲労感については、福島原発事故の後に私自身が経験している。2011年3月13日朝から原発周辺での取材を繰り返した後、持っていた測定器が振り切れるという経験をして、その後4月に突然非常な疲労感と下痢が襲ってきた。被曝と疲労感が関係あるのかどうか、あとで数字を見てもらう。

鼻血はどうか。私自身は鼻の粘膜の異常を感じることはよくあった。しかしはっきり流れるほどの鼻血は経験していない。

私は2012年7月に沖縄県久米島で福島の子どもたちの保養施設「沖縄・球美の里」を設立し、運営している。ここにこれまで訪れた保護者たちから、鼻血の話題はよく聞いた。福島でも聞いている。だから誰でも知っていることかと思っていた。だがこれほど大騒ぎになって、「ありえない」とか「事実無根」とか聞くと、そんなに完全に打ち消そうとするということは、どのような意図が働いているせいかと疑ってしまう。これほど大きく問題にすると、かえって「住民の不安をあおる」ことになってしまうではないかと思う。鼻血は出ると訴えている人がいることを認めた上で、それが大きな病気に結びつくのを防ぐためにはどうすればいいのかを話す方が建設的ではないかと思う。

私は1986年のチェルノブイリ原発事故以降、50回を超えて現地での取材と救援活動を続けている。そしてこの3月、映画取材班とともに、チェルノブイリを5年ぶりに取材した。ウクライナの高濃度汚染地域であるナロジチ地区のナロヂチ市中央病院の副院長に、日本では福島原発事故の後、鼻血がでた子どもが増えたという声を聞くが、チェルノブイリではどうだったのか、と聞いた。すると副院長は「チェルノブイリでも事故の後、鼻血が増えた」と答えた。被曝によって血液系統の病気が増えた。鼻血もそうだが、貧血も増えたということだった。白血病の前段階の症状も増えたという。

1990年、IAEAはチェルノブイリの調査団を派遣し、翌年、健康被害の不安を打ち消す報告書を発表している。その報告に疑問を持った私たちは、広河事務所とチェルノブイリ子ども基金(当時は私が代表だった)共同で、現地NGOの協力を得て、1993年8月から1996年4月まで、避難民の追跡調査を行ったのだ。

調査項目は数百にのぼり、アンケート形式で本人あるいは家族に書いてもらった。回収できたアンケートは2万5564人分である。チェルノブイリ避難民のこれほど大掛かりなアンケート調査は、ほかにはないと思われる。私たちにそれができたのは、これが救援目的におこなった調査だからである。人々の健康状況を把握できなければ、どのような救援を行っていいのかわからないからだ。

アンケート調査は困難だったが、私たちにはIAEAにはない強みがあった。それはそれまでの救援活動の実績と現地の人々との信頼関係、チェルノブイリ支援の現地NGOとのつながり、である。ほかならぬ被災者に会うことが、私たちの仕事だったということもある。

この報告書は日露版の冊子の形で発行され、この3・11後にその一部を『暴走する原発』(小学館)に収録した。

その結果から、鼻血と疲労に関する数字を中心に見ていきたい。ただ人々を襲ったのはもっと多様な症状だったので、それらも記載しておきたい。



●プリピャチ市(原発から約3キロ)の避難民アンケート回答者9501人 

 「事故後1週間に体に感じた変化」という質問に、人々は次のように答えた。

頭痛がした 5,754人 60.6%

吐き気を覚えた 4,165人 43.8%

のどが痛んだ 3,871人 40.7%

肌が焼けたように痛んだ 591人 6.2%

鼻血が出た 1,838人 19.3%

気を失った 880人 9.3%

異常な疲労感を覚えた 5,346人 56.3%

酔っぱらったような状態になった 1,826人 19.2%

その他 1,566人 16.5%

  

「その人々の事故から約10年後の健康状態」

健康 161人 1.7%

頭痛 7,055人 74.3%

のどが痛む 3,606人 38.0%

貧血 1,716人 18.1%

めまい 4,852人 51.1%

鼻血が出る 1,835人 19.3%

疲れやすい 7,053人 74.2%

風邪をひきやすい 5,661人 59.6%

手足など骨が痛む 5,804人 61.1%

視覚障害 2,773人 29.2%

甲状腺異常 3,620人 38.1%

白血病 50人 0.5%

腫瘍 440人 4.6%

生まれつき障害がある 34人 0.4%

その他 1,715人 18.1%



「現在の健康状態は事故の影響だと思っているか」

100%事故が原因である 47.3%

かなり事故が影響している 14.5%

全く事故と無関係ではない 38.2%

事故とは無関係である 0.0%

健康である 0.0%



念のため、数は多くはないが、比較対象のために行ったモスクワ市民の集計(316人)は次のとおりである。

「現在の健康状態」

健康   173人  54.7%

頭痛    53人  16.8%

のどが痛む 27人   8・5%

貧血     6人   1・9%

めまい   22人   7・0% 

鼻血が出る 10人   3・2%

疲れやすい 67人  21・2%

  風邪をひきやすい 56人 17・7%

手足などの骨が痛む23人  7・3%

視覚障害     51人  16・1%

甲状腺異常    11人   3・5%

白血病       2人   0・6%

腫瘍        8人   2・5%

生まれつき障害がある0人   0%

その他      22人   7・0%

 

●チェルノブイリ市(原発から約17キロ)の避難民のアンケート回答者2,127人

(人々は事故からおよそ8〜9日後に避難した)

「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 1,372人 64.5%

吐き気を覚えた 882人 41.5%

のどが痛んだ 904人 42.5%

肌が焼けたように痛んだ 151人 7.1%

鼻血が出た 459人 21.6%

気を失った 207人 9.7%

異常な疲労感を覚えた 1,312人 61.7%

酔っぱらったような状態になった 470人 22.1%

その他 287人 13.4%

「現在の健康状態」

健康 58人 2.7%

頭痛 1,587人 74.6%

のどが痛む 757人 35.6%

貧血 303人 14.2%

めまい 1,068人 50.2%

鼻血が出る 417人 19.6%

疲れやすい 1,593人 74.9%

風邪をひきやすい 1,254人 59.0%

手足など骨が痛む 1,361人 64.0%

視覚障害 649人 30.5%

甲状腺異常 805人 37.8%

白血病 15人 0.7%

腫瘍 80人 3.8%

生まれつき障害がある 3人 0.1%

その他 426人 20.0%



●チェルノブイリ地区の村々の避難民12,864人の回答

「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 7,805人 60.7%

吐き気を覚えた 5,497人 42.7%

のどが痛んだ 5,160人 40.1%

肌が焼けたように痛んだ 813人 6.3%

鼻血が出た 2,491人 19.4%

気を失った 1,194人 9.3%

異常な疲労感を覚えた 7,259人 56.4%

酔っぱらったような状態になった 2,471人 19.2%

その他 1,966人 15.3%



●ノヴォシュペリチ村(原発から6キロ)の避難民の回答者351人

「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 216人 61.5%

吐き気を覚えた 158人 45.0%

のどが痛んだ 124人 35.3%

肌が焼けたように痛んだ 19人 5.4%

鼻血が出た 65人 18.5%

気を失った 35人 10.0%

異常な疲労感を覚えた 192人 54.7%

酔っぱらったような状態になった 69人 19.7%

その他 55人 15.7%

「現在の健康状態」

健康 4人 1.1%  

頭痛 264人 75.2%

のどが痛む 114人 32.5%

貧血 55人 15.7%

めまい 171人 48.7%

鼻血が出る      70人 19.9%

疲れやすい 268人 76.4%

風邪をひきやすい 225人 64.1%

手足など骨が痛む 211人 60.1%

視覚障害  80人 22.8%

甲状腺異常 110人 31.3%

白血病  0人 0.0%

腫瘍 19人 5.4%

生まれつき障害がある  0人 0.0%

その他 86人 24.5%



●ポレスコエ地区(原発から約45キロ)避難民の回答者1,005人

「事故後1週間に体に感じた変化」

頭痛がした 623人 62.0%

吐き気を覚えた 380人 37.8%

のどが痛んだ 420人 41.8%

肌が焼けたように痛んだ 76人 7.6%

鼻血が出た 292人 29.1%

気を失った 166人 16.5%

異常な疲労感を覚えた 595人 59.2%

酔っぱらったような状態になった 215人 21.4%

その他 92人 9.2%

「現在の健康状態」 

健康 29人 2.9%

頭痛 705人 70.1%

のどが痛む 361人 35.9%

貧血 133人 13.2%

めまい 435人 43.3%

鼻血が出る 216人 21.5%

疲れやすい 675人 67.2%

風邪をひきやすい 528人 52.5%

手足など骨が痛む 651人 64.8%

視覚障害 185人 18.4%

甲状腺異常 306人 30.4%

白血病 2人 0.2%

腫瘍 25人 2.5%

生まれつき障害がある 2人 0.2%

その他 162人 16.1%



このほかアンケートを行ったのは、約40の市や村である。その避難民の統計を見ても、同じような数字の傾向となっている。鼻血と疲労感だけを抜き出して見ると次のようになる。

●ナロヂチ地区の場合(194人)

「事故後1週間に体に感じた変化」

鼻血が出た 47人 24.2%

異常な疲労感を覚えた 111人 57.2%

「現在の健康状態」

鼻血が出る 40人 20.6%

   疲れやすい        143人     73.7%



●ナロブリャ地区の場合(1881人)

「事故後1週間に体に感じた変化」

鼻血が出た 323人 17.2%

異常な疲労感を覚えた 921人 49.0%

「現在の健康状態」

鼻血が出る 195人 10.4%

疲れやすい 975人 51.8%



●ホイニキ地区の場合(908人)

「事故後1週間に体に感じた変化」

鼻血が出た 124人 13.7%

異常な疲労感を覚えた 443人 48.8%

「現在の健康状態」

鼻血が出る 72人 7.9%

疲れやすい        445人     49.0%



●ブラーギン地区の場合(1,019人)

「事故後1週間に体に感じた変化」

鼻血が出た 161人 15.8%

異常な疲労感を覚えた 677人 66.4%

 「現在の健康状態」

鼻血が出る 119人 11.7%

疲れやすい 492人 48.3%

(アンケートの翻訳には、東京外国語大学のロシア語科の学生を中心に、約60名が協力してくれた)



※DAYS JAPAN6月号(5月20日発売号)では、チェルノブイリの実測放射能汚染地図と、福島の人が住む町との比較を紹介します。

No comments:

Post a Comment

Note: Only a member of this blog may post a comment.