―震災は大災害ではあり悲惨なことである。しかしながら、生き方を見直すのにはチャンスであるという意見があります。
それは同感です。一つ思ったのは、近年の日本人はすごくフワフワした生き方をしてきた。生命の危険をほとんど感じない世代が幾つか続いたでしょう。戦争を知っているのは、かろうじて僕の親の世代まで。それ以降の世代の大半は「もしかしたら今日死んでしまうかもしれない」と言ったような危機感とは、ほぼ無縁で生きてきたのだと思います。「死」が遠ざかっていて、だからこそ生きることが難しい。生と死はセットだから、死が遠ざかると生も遠ざかるのです。
今回、震災の死者数は最終的に二万人以上に上ると予測され、さらに原発問題があります。「今日何を食べるのか」「水道水を飲むのか飲まないのか」「移住するのかしないのか」。それぞれの生命に関わりかねない、様々な問題が出てきました。そのことで死を意識し、今まで休眠していた感覚が立ち上がる契機になるかもしれません。それ自体は悲劇なのですが、悲劇を肯定的にとらえれば、「何が大事なのか。何故、自分は生きているのか。なぜ仕事をするのか」ということを問い直す機会にもなると思うのです。
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