福島原発が制御不能状態に陥った。国家存亡の危機である。広瀬隆「原子炉時限爆弾」は2010年夏に発行された。現在の原発震災の到来を気味の悪いくらいピタリと予言している。とてもショッキングな内容で、誇張や煽りも含まれているかもしれないが、読んでおくことは無益ではないと思う。参考までに引用しておきたい。
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ー引用開始ー
日本が商業用の原子力発電を始めることを決定した翌年、1960年4月に科学技術庁の委託を受けて、日本原子力産業会議が科学技術庁原子力局に提出した極秘文書「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」とある。
当時、わが国最初の商業用原子炉として計画的が進められていた茨城県の東海発電所で最悪の大事故が起こった場合に、どれほどの被害が発生し、日本政府がその被害を補償できるか、保険会社がそれを引き受けられるかどうかを、真剣に検討したものである。
報告書に掲載された被害予想図である。地図の下に、「物的損害は、(気象条件によって)最高では農業制限地域が長さ1000キロに及び、損害額は一兆円以上に達しうる」と小さく書かれており、東海村からの半径が同心円で示されていた。つまり図にやや濃く描いた円内の矢印範囲は、農業ができない地域になる。日本全土で農業ができないのだから、日本人が日本列島に住めないと考えてよいだろう。全員が被害者になるのだから、この問題で論争をしたり、推進派と反対派を色分けしたり、自分がどこの都道府県に住んでいるかによって安全か危険かを判断する人間は、よほど知恵が足りないということになる。
この事故の条件は、出力16.6キロワットの東海村で大事故が発生し、わずか2%の放射能が放出された場合を想定して、日本全土が壊滅する、という結論であった。実際の原発事故では、わずか2%の放射能放出は、小さすぎて考えられない数値である。(想田注:福島の場合、1号=46万、2号・3号=それぞれ78.4万。合計202.8万キロワット)
(中略)気象条件によって被害範囲がどこまで広がるかは誰にも予測できないが、広大な地方が消えることだけは間違いない。その時、おそらく日本と言う狭い国家は「放射能汚染地帯」の烙印を押されて世界貿易から取り残され、経済的にも激甚損害を受けて廃墟になると考えるのが、最も妥当な推測だろう。
(中略)電力会社は、日本国内の損害保険会社などがつくった「日本原子力保険プール」に加盟して、原発一基あたり1200億円までしか保険で賠償金得をまかなう義務がないことになっている。つまり賠償責任には上限があって、保険を超える損害に対しては、政府が国民の税金で補償することになっている。
広瀬隆「原子炉時限爆弾」
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