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Saturday, July 19, 2008

人間の條件 第一部

明日東京へ出発するのだというのに、今日からフィルムフォーラムで小林正樹監督の『人間の條件 第一部』をやるというので、観に行った。第一部だけで三時間半、三部合わせると10時間近い超大作。前の日記に書いた通り、第三部は先日主演の仲代達矢氏と並んで鑑賞した。

第三部も凄かったが、第一部も凄まじかった。無理して観て、本当に良かった。第二部はまだ観てないが、もしかするとこの映画は、これまでに僕が観た映画の中で、最も偉大な作品かもしれない。いや、人類にとって最も重要な作品かもしれない。とにかく圧倒された。一瞬たりとも緊張感が途切れない。三時間半が、あっという間に過ぎた。こんな映画は、二度と、世界中の誰にも撮れないだろう。

複雑な現実を複雑なまま提示しているこの映画を、一言で総括するのはあまりにも乱暴だが、敢えて言うならば、これは倫理を貫くことについての映画であると思う。断っておくが、ここで言う倫理とは、道徳とは全く異なる。

道徳とは、社会から強制されるルールを差し、時と場所によってコロコロ変わりうる。例えば、『人間の條件』の時代の道徳的行いとは、天皇のために死ぬことであり、どんな理不尽な命令でも上官や上司に従うことであり、中国人の首を平気で切り落とせることである。それが日本の敗戦と同時に、一夜にして180度ひっくり返ったことは、誰もが知っている。

それに対し倫理的行いとは、自らの良心に従った行いであり、主体性を有する者だけが獲得できるものである。つまり、人間の内面から出てくる規範。したがって、場所や時代が変わってもそう簡単に変わるものではなく、普遍的である。

戦時下の満州で、自らの良心に耳を傾け、非暴力と博愛という倫理を貫こうとする仲代達矢は、当時の日本人としての道徳とことごとく齟齬をきたし、徹底的な迫害を受ける。普通の人間なら、自分の身が危なくなれば道徳の側に寝返り、自らの倫理を捨て去ってしまうのだろうが、仲代扮する梶は、苦悩にのたうちながらも、頑強に倫理を捨てない。彼にとっては、それを保持することが、人間であるための条件なのである。

その闘いぶりが、あまりにも凄まじく、痛ましく、しかし力強く、美しい。魂を揺すぶられる。強大な力に比して梶はあまりに非力で、翻弄され、痛めつけられ、負け続けていくのであるが、彼が自らの倫理に従う限り、本当に負けているのは道徳の側なのである。

ぜひご覧下さい。

http://www.filmforum.org/films/human.html

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