Thursday, March 07, 2013

TPPと資本主義と民主主義

「東京新聞」の報道によると、TPPに一旦交渉に参加したら自分の意志でやめれないらしい。それに、既に決まった条件は飲むしかないらしい。

これ、帰れない「ぼったくりバー」みたいだな。

こんなのになんで好き好んで参加すんの??

いったん交渉に参加したら日本の意志で抜けられない、詳しい内容すら不明の国際協定に、日本国民の判断を仰がず、首相が勝手に参加してしまうことは、憲法の国民主権に反すると思うんだけど、どうでしょう?

っていうか、交渉に参加を表明したら最後、日本の意志では抜けられないという極悪な条件を極秘にするって、その時点でTPPは非常にいかがわしいし、首相がその事実を日本国民に極秘にしているならば、首相も極めていかがわしい。

会社であれば、社の利益に反する背任行為でしょうに。

そもそも、交渉内容が極秘でリークでしか伝わってこないTPPという国際協定について、国民はどうやって判断すればよいというのか。「内容が分からないから参加しない」という判断以外ありえないだろう。

それとも皆さんは普段、「内容は極秘だけど悪いようにしないから押印して」って言われて契約書に判を捺すのだろうか?

ISDS条項が各国の憲法よりも上位に位置し、国民主権を侵すことはかなり知られてきた。しかし、各国の国民に交渉内容を極秘にしながら交渉が進められている国際協定であるTPPは、その交渉の仕方そのものが、国民主権に反している。

つまりTPPとは、企業が国民に優越する「企業主権」なのだ。

後世の歴史家は、TPPなどの現象を記述する際に「国民主権を大原則として発展してきた近代民主国家は、この頃から事実上の企業主権へと移行していった」と書くのではないだろうか。それをもしかしたら「表面上は民主主義にのっとって極秘裏に進められた無血革命」と呼ぶかもしれない。

国民主権が無力化された「企業主権」の世の中では、「国民」は解体されて「消費者」や「労働力」になる。実際、そういう変化はもう起きている。現在進行形の変化である。

TPPの草案に、企業の代表である顧問600名はアクセスできても、国民の代表であるアメリカの議員が閲覧できないのは、まさに「企業主権」そのもの。
http://yamachanblog.under.moo.jp/?eid=512

東西の冷戦構造の中で、西側では民主主義と資本主義を混同する言説がまかり通っていたが、そのすり込みは今頃になってボディブローのように効いている。みんなが混同している間に、だましだまし、資本主義が民主主義を飲み込みつつある。

資本主義にとって、民主主義はときに邪魔だからだ。

つまり、いま起きていることは、こうだ。

共産主義と言う強大な敵がいた時代には、資本主義は民主主義を味方にして手を組んだ。しかし共産主義が弱体化し敵でなくなったいま、資本主義は儲けるために民主主義が邪魔になりつつある。だから今度は民主主義を弱体化しようとしている。

「資本主義」の対立軸には、いままで「共産主義」や「社会主義」を想定してきたが、現代においては、それが対立するのは「民主主義」なのである。

民主主義が、資本主義をどのように邪魔するのか。たとえば、公的保険を作ってすべての人に健康保険を享受できる権利を与えようというのは、個人の生存権を重んじる民主主義の発想だが、健康保険に参入して儲けたい保険業界という資本主義勢力には邪魔でしかない。

あるいは、環境基準。資本主義は、本音では環境なんておかまい無しに工場を安く作って汚染水垂れ流しでバンバン生産したいだろうが、民主主義では個人の生存権を重視するので、環境基準を設けて企業の活動に一定の制限を課して縛る。邪魔だ。

あるいは、労働基準。資本主義勢力にとっては、労働力なんて安ければ安いほど良い。しかし、例えば時給50円だったら労働者の人権、生存権など守れない。だから民主主義では労働法を作り企業の活動を制限し、個人の人権を守ろうとする。これも資本主義にとっては、すんごく邪魔。

つまり、資本主義による民主主義への攻撃は、これまでもネチネチと進行してきて民主主義はいま病んで重症なんだが、TPPは民主主義が入院している病院を、今度はバズーカ砲で奇襲攻撃しようとしているわけだ。

これで民主主義は即死するかもしれないし、運良く生き延びても弱体化は避けられない。それは日本だけでなく、攻撃を仕掛けているようにみえている、アメリカだって同じなのである。

人類の歴史は、いまひとつの曲がり角に差し掛かっているのかもしれない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013030702000237.html?ref=rank


「東京新聞」TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず
 2013年3月7日
 環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。
 各国は今年中の交渉妥結を目指しており、日本が後れて参加した場合もカナダなどと同様に交渉権を著しく制限されるのは必至だ。
 関係筋によると、カナダ、メキシコ両政府は交渉条件をのんだ念書(レター)を極秘扱いしている。交渉全体を遅らせないために、後から参加する国には不利な条件を要求する内容だ。後から入る国は参加表明した後に、先発の国とレターを取り交わす。
 カナダなどは交渉終結権を手放したことによって、新たなルールづくりの協議で先発九カ国が交渉をまとめようとした際に、拒否権を持てなくなる。
 交渉参加に前向きな安倍晋三首相は、「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」と繰り返しているが、政府はカナダとメキシコが突きつけられた厳しい条件を明らかにしていない。日本がこうした条件をのんで参加した場合、「聖域」の確保が保証されない懸念が生じる。
 カナダ、メキシコも一部の農産品を関税で守りたい立場で、日本と置かれた状況は似ている。国内農家の反対を押し切り、対等な交渉権を手放してまでTPPの交渉参加に踏み切ったのは、貿易相手国として魅力的な日本の参加とアジア市場の開拓を見据えているからとみられる。
 先にTPPに参加した米国など九カ国は交渉を期限どおり有利に進めるため、カナダなど後発の参加国を「最恵国待遇」が受けられない、不利な立場の扱いにしたとみられる。
 <TPP交渉参加国> 2006年、「P4」と呼ばれたシンガポールとニュージーランド、チリ、ブルネイによる4カ国の経済連携協定(EPA)が発効。これに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが10年に加わり、9カ国に拡大した。その後、カナダとメキシコも参加を表明し、12年10月の協議から11カ国で交渉している。

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