赤塚不二夫さんが亡くなった。葬儀でタモリ氏が述べたという弔辞が心に残った。
「あなたは生活のすべてがギャグでした。あるがままを肯定し、受け入れ、人間を重苦しい陰の世界から解放しました。すなわち『これでいいのだ』と。」
人生からつらいこと、苦しいことを完全に消し去ることはできない。しかし、それをギャグにすることによって、何とか受け入れられるのではないか。これは赤塚さんの人生観なのか、タモリさんのそれなのか、僕には判らないけれど、そういう考え方には素直に共感できる。実際、赤塚さんの漫画にはそういう力があった。いや、作品は残っているから、今でもあるのである。
僕なんぞは子供のころから、人生は苦であるという感覚に親しんできた。もちろん楽しいこともあるけど、苦と楽の割合は9対1くらいで、日々の生活の実感として、圧倒的に苦が優勢であると思ってきた。だから、仏教の思想に初めて触れたときは、我が意を得たりというのも変だが、奇妙な安堵を感じたものである。
ところが以前カミさんにそう話したとき、彼女にとっては苦と楽が1対9の割合くらいだというので、天地がひっくり返るほど驚いた。なんてハッピーな人なんだと思って、親しい友人にそのことを話したら、彼も同じように1対9だと言うので二度驚いた。もしかしたら俺の方が少数派なのか…。
いずれにせよ、同じ世界で同じ空気を吸っていながら、こうも人生観が違うのは驚愕に値する。ウィトゲンシュタインじゃないけど、同じ言葉を喋っていても、決して判り合えていないのではないかなどと、ちょっと不安にもなる。赤塚さんにとっての比率はどうだったんだろう。
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