Sunday, June 22, 2008

RAN by Kurosawa


昨晩、NYのジャパン・ソサエティで黒澤明の『乱』を観た。

既に映画館も含め4、5回観てたし、あまり好きではなかったので、正直、今回観ようかどうか迷ったくらいだったが、仲代達矢さんが来られるというので観に行った。そして観て良かった!とにかく今回観た感想は、凄まじくも素晴らしい、の一言であった。こんなに自分の中で印象が変わった映画はない。僕がやっと映画に追いついたということか。

僕が『乱』を好きでなかった理由は、望遠レンズを多用した平面的なカメラワークだとか、大げさな演技や台詞回し、メークアップだとか、主に映画のスタイルに関することであった。そのスタイルは、もちろん今もそのままなのだが、そんなことはどうでもいいほど、描かれている世界が映画というジャンルを超越していた。要するに僕の見方が変わったのである。

敢えて一言で総括するならば、それは「因果応報」の映画であった。原因があれば、その結果がある。その当たり前すぎる命題を、冷徹に描ききった映画であった。しかもそれは、良いことをすれば報われ、悪いことをすると罰せられるというような、甘ったるい勧善懲悪ではない。人間の存在や喜怒哀楽など、砂粒のごとく小さく見えるような、もっと大きい宇宙の原理を描いている。

黒澤は「人類への遺言」としてこの映画を撮ったそうだが、僕は初めて、彼の遺言に耳を傾けられたような気がする。

ちなみに、仲代達矢さんは『乱』を演じたときに50歳だったそうで、メークに毎日3時間半かかったそうである。現在75歳だが、映画で観るよりも断然お若いので、不思議な気がした。フィルム・フォーラムでは大規模な仲代特集が始まっている。

No comments:

Post a Comment

Note: Only a member of this blog may post a comment.