Sunday, August 31, 2014

秘密保護法の重大な問題点

秘密保護法の問題点は権力にフリーハンドを与え過ぎて暴走を止められないことにある。例えば万が一、満州事変のような事件を自衛隊が起こしたとしたらどうか?自衛隊が自作自演の爆破をしたことは当然特定秘密に指定されるだろう。するとそれをスクープしたジャーナリストは犯罪者になる。

戦時中、秘密保護法によく似た法律に軍機保護法というのがあった。これは平時にはあまり活用されなかったが、日中戦争に突入した頃から威力を発揮。総力戦になると日本軍の「戦死者の数」すら軍事機密に指定された。「日本が負けている」という情報はトップシークレットだったからだ。

戦死者の数すら機密だという状況では、メディアは戦況の独自取材など不可能。政府が出す公式情報(大本営発表)を垂れ流すしかなくなる。僕が懸念するのは、秘密保護法下でも同じことが起きえるということだ。少なくとも秘密保護法に「戦死者の数を秘密に指定してはならない」とは書いていない。

秘密保護法には秘密に指定できる事項として「自衛隊の運用又はこれに関する見積もり若しくは計画若しくは研究」とある。物凄く広い。「自衛隊の戦死者の数」がこれに入ると解釈されても不思議ではない。つまりチェック機関ができても、彼らは戦死者の数を秘密に指定した行為を違法と断定できない。

よく「チェック機関を作るので権力を制御できる」という議論を聞くが、極めて危ういことがお分かりだろう。秘密保護法は秘密に指定できる範囲が広すぎるので、「何を秘密に指定すると違法になるか」がそもそも分からないのである。これではチェックしても意味がない。全部「適法」になりうるんだから。

取材の自由については「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」とあるが、これもまやかしだ。

例えば、原発事故が起きて20キロ圏内が立ち入り禁止になり、取材者が圏内に潜入して「秘密」に指定された重要な情報をスクープしたとする。その行為はジャーナリズムの使命であり、国民の利益にもかなうが、法令違反だ。ということは、秘密保護法違反の重罪に問われる恐れが強い。

法令違反が絡まなくても問題だ。例えば僕が取材活動を通じて特定秘密を知ったとする。その時点で秘密保護法違反であり裁判になるだろう。しかし秘密の内容は僕の弁護人には開示されない可能性が高い。秘密だから。ということは、そもそも秘密に指定した行為が正当かどうか、裁判で争えないことになる。

秘密保護法は人間観にも統一性がない。「厳罰を課さなければ漏洩を防げない」と「漏らす側」には性悪説を採る一方で、秘密を「指定する側」には性善説を採り、不適切な指定に対する罰則がなく、統一基準という名の努力目標しかない。権力に対する無条件の信頼を求めている。著しくアンバランスである。

先週の日曜討論では、そういうことを全部クリアに言いたかったんだけど、発言時間が限られていて充分に展開できなかった。この一週間、ずっとそのことが自分の中でくすぶっていたので、吐き出してみた。

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