Thursday, September 08, 2011

横川シネマについて

広島・横川シネマの名物支配人・溝口氏は、『Peace』に「男の世知辛さ」を見たという。そういう感想を僕に言ったのは、今のところ世界で彼だけである(笑)。映画館に棲息する氏の世界と同期したのだろう、やけに的を得ていると思った。同時に、つげ義春という名が脳裏に浮かんだ。

ちなみに、横川シネマでは9/10(土)から3週間、『Peace』を上映。『選挙』と『精神』もアンコール上映される。はしご割引もあるそうである。(このネーミングがまた溝口さんらしい)。男の世知辛さ漂う映画館で『Peace』や過去作を見るのはオツかもしれない。

せっかくなので、横川シネマが10周年を迎えたときに僕が寄せた文章を引用する。

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横川シネマには、アットホームな空気が流れている。しかし、いわゆる「家庭的」というのとは、なんだか違う。なんでかなあと考えた。

それで出た答え。

横シネの溝口支配人は、映画館をたった独りで切り盛りしているので、平日も週末も祝日も、朝から晩までずーっと映画館にいる。交代する人がいないんだからなあ。つまり映画館に住んでいるようなものである。横シネ=溝口支配人住居説の浮上。

しかるに、溝口氏は1970年生まれの独身中年男である(オイラと同い年!)。家庭的なイメージとは程遠いオッサンである。要するに、横シネのアットホームな雰囲気とは、独身男の汚い下宿に一升瓶を抱えて「うい~っす」と上がり込んだときのような、そういうアットホームさだったのだ。文字通りの「At Home=家にいる」っていう奴です。ようやく納得。アットホームにもいろいろあるもんだ。

そういう横シネが存在する限り、ニッポン社会もニッポン映画界も捨てたもんじゃないじゃないかと、なんとなく安心するなあ。10周年、ホントにおめでとう。

想田和弘(映画作家)

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