Wednesday, November 26, 2008

『精神』関係者試写会をやりました

11月22日、岡山で『精神』の関係者向け試写会を行った。映画に登場してくれた患者さん、医師、スタッフ、ボランティアの方々に初めて作品を見せる会だったので、どんな反応が出るのか、正直言って、試写会をやろうと決めたその日から、いや、カメラを回し始めてからずっと不安だった。というよりも、恐怖を感じた。

特に今回は、普通ならモザイクがかけられてしまう精神科の患者さんが、大勢素顔で登場している。普段から自殺願望を抱えている人も少なくなく、映画を公開することで何が起こるか分からない、最悪の事態になったらどうしよう、というのが僕の偽らざる心境だった。

でも、もっと不安だったのは被写体の人々、特に病を抱える当事者の方々だったと思う。自分が出た映画を観たい、いや、どんな風に撮られてるのか不安だから観たくない、そういう揺れ動く心をみんなが経験したと聞いた。実際、「絶対行かない」と公言していた人が直前になって観ようと決意し、会場に来てくれたケースもあれば、その逆もあった。

診療所の患者さんと仕事をする義母は、そうなることを予め見越し「みんなの命を守らにゃいけん」と、試写会前後の支援体勢について色々な手配をしてくれた。診療所のスタッフの方々も、試写会に向けて万全の環境を整えてくれた。

それでも、当日が僕にとって一種のクライシス、危機的状況になるであろうことは、容易に想像できた。詳しいことは後で本にする予定だし、ここには書かないが、実際、これまでの人生でも最大級の修羅場になった。質疑応答の際に、とある患者さんに激しく問い詰められたときは、心底、気が動転したし、その場に立っているのがやっとだった。でも、僕は気を取り直して自分の考えや気持ちを正直に伝えた。他の参加者もそれぞれの意見や感想を述べた。そして、議論するうちに最後にはお互い分かり合えた気がするし、僕を問い詰めた患者さんの表情や言葉も明るくなった。一種のカタルシス。雨降って、地固まった。全身の力が抜けた。

23日には山本先生への3時間に渡るロング・インタビュー、映画に登場してくれた当事者5人の座談会、義母と義父へのインタビューを行った。先に触れた関連書籍に盛り込むためである。

映画を撮ってる最中にも、山本先生にはいろいろ聞きたいことがあったのだが、当事者中心の映画にしたかったから、敢えて聞かずにいた。それがやっと実現できて、いろんな発見もあって、嬉しかった。山本先生は、やっぱり偉大な人だと思う。

当事者の座談会は、試写会後の質疑応答とはうって変わって、和やかな雰囲気で進められた。前の日に僕を厳しく追及した患者さんも、時には泣きながら、時には笑いながら、自分の心境や境遇を改めて語ってくれた。僕は心からホッとした。この映画を撮って良かったと、改めて思った。

映画美学校で講座

12月2日(火)、映画美学校の公開講座「ノンフィクション講座」にゲスト講師として呼ばれています。僕がニューヨークのSVAという美大の映画学科で作った初期の劇映画や、テレビ用のドキュメンタリー作品等を上映しながら、観察映画に取り組むに至った動機や道筋などについて語ります。講座の主である代島治彦氏との対話の形で進行していきます。

一般にも公開されている講座ですので、ぜひご参加を!!!

http://www.eigabigakkou.com/public/index18.html

Tuesday, November 18, 2008

ロボット演劇『働く私』

大阪で平田オリザ氏の新作『働く私』の稽古を撮って、いま新幹線で帰京しているところです(イーモバイルっつーのを勧められて買ったんだけど、新幹線でもパソコンをネットにつなげてスゲー便利。トンネルではさすがに切れちゃうんだけどね)。

『働く私』は、なんとロボット2体と人間の俳優2人がお芝居をするという、世界初の試み。ロボットは三菱重工製のWakamaruというモデルなんだけど、動きや声の抑揚が細かくプログラミングできるので、平田さんの台詞を役者さんと一緒に「演じる」と、ホント、生きてるみたいだった。

http://fringe.jp/topics/2008/10/261.html

Tuesday, November 11, 2008

青年団の撮影、再び

昨日から青年団の撮影を再開した。昨日は、夏から稽古している『冒険王』の仕込み。アゴラ劇場が工事中で、もの凄い騒音の中、搬入やセット・会場作りが行われた。

今回の滞在では、『冒険王』の他、新作『サンタクロース会議』や、世界初のロボットを使った演劇『働く私』の舞台裏と本番を撮影させてもらう予定。

早目に終わったので、筑紫哲也さんの2時間追悼番組に間に合った。前日に見つかった筑紫さんの日記「残日録」を軸にした、凄い番組だった。見終わった後で、番組が出来る過程を後でご家族から聞いて、奇跡的に出来た番組だったんだなあと胸が震えた。改めて、惜しい人に逝かれてしまいました…。

Friday, November 07, 2008

筑紫哲也さん

7日の朝、筑紫哲也さんが亡くなった。
ショックで呆然とするしかない。
東大新聞に籍を置き、ジャーナリストを目指していた頃から、
尊敬し憧れていた。
僕にとってのヒーローだった。
いつかいい仕事をして、番組にゲストとして呼んでもらうんだと、
密かに自分の目標というか、夢にしていた。
もちろん、おこがましくてそんなことはこれまで誰にも言ったことはない。
ところが『選挙』がベルリン映画祭で公開されたとき、
ニュース23で取り上げてもらえた。
あのときは本当に驚いたし、ただならぬ感慨を憶えた。
スタジオには呼んでもらえなかったけど、
人生の新しい章が開いたような気がした。
結局、一度もお目にかかれなかった。
この喪失は大き過ぎる。
僕にとっても、日本にとっても。
明日東京へ向かうので、お別れを言いに行きたいです。

Wednesday, November 05, 2008

Obama Wins

歓喜というよりも、ホッとしました。マケインが勝ったら、本気でアメリカを引き揚げるつもりだったし。それにしても、8年間のダメージは大きかった…。二つの泥沼戦争、未曾有の経済危機、貧富の差の拡大、恐るべき赤字財政…。

アメリカ人、はっきり言って気付くの遅過ぎる。しかし、永遠に気付かないよりはずっといい。乾杯。

Tuesday, November 04, 2008

台湾にて In Taiwan









11月2日から、台湾国際ドキュメンタリー映画祭に出席するため、台湾第3の都市・台中に来ている。摂氏27度!未だにここは夏である。

3日の朝、さっそく他の審査員との顔合わせ。インターナショナル・長編映画コンペティション部門の審査員は僕を含め3人。映画監督のミカエル・ヴェッター氏(65歳のメキシコ在住オーストリア人)、映画監督で台湾国家文化芸術基金所長の黄明川氏(52歳の台湾人)、そして僕(38歳)である。3つの世代が集まったねえ〜と言いながら、朝食ミーティング。

14カ国から集まった15本の作品を4日間で観て、グランプリ1本と次席2本を選ぶ。この前のPBSの番組審査委員会でも思ったけど、他人の作品を審査するというのは、本当に難しい。映画を観た直後にちょっと話しただけでも、他の審査員とは意見が割れる。

結局は、映画を作った人の主観と、選ぶ側の主観が入り乱れ、火花を散らしてぶつかり、共倒れになった落ちどころで順位が決まるような感じ。いずれにせよ、好き嫌いが影響する極めて主観的な作業であり、絶対に科学的ではない。しかし、どの映画を選ぶかで、その映画の運命を左右してしまうようなこともあるから、いい加減には決められない。

その一方で、3日には『精神』の上映があった。釜山での受賞がニュースとして流れていたせいか、上映前から長い行列ができ、場内は満員。
http://www.tidf.org.tw/2008/ch/news_detail.php?&uid=28

上映後もお客さんのほとんどが残ってくれ、白熱した質疑応答が展開された。出された質問は、「あのような診療所は日本では典型的なのか?」「どうやって撮影許可を得たのか?」「被写体にあれほど心を開いてもらえた秘訣は?」「音楽を使わない理由は?」などなど。

観客の主流は、20代らしき若者。とくに女性が多い印象を受けた。質疑応答が時間切れで打ち切られた後も、ロビーでお客さんに取り囲まれ、美術館の閉館で追い出されるまで延々と議論を続けた。『選挙』の上映ときは、ガハハと笑ってハイ解散、という感じが多かったけれど、『精神』はいつまでも議論が尽きない傾向にある気がした。それは正に僕の望むところであるから、時間が許す限りとことん語り合おうと思う。

http://www.tidf.org.tw/2008/ch/news_detail.php?&uid=45

4日には、SVA映画学科時代の盟友で今は台湾に帰っている撮影監督のルーク・チェンとその家族が、僕に会いにわざわざ台北から来てくれた。ルークは僕が学生時代に撮った作品のほとんどで撮影監督(カメラマン)をやってくれた、いわば同じ釜の飯を食った仲である。もうすぐ2歳になる娘さんに初めて会った。ルークは「俺、コイツが幸せなら何がどうなっても全然かまわない」とか言って、娘にメロメロ…。あのルークがねえ、と、彼の髭に白髪が交じっているのをマジマジと見つめながら、深い感慨に包まれた。なんにせよ、親子三人でホントに幸せそうで、心から良かったなあと、僕は感動せずにはおられなかったのである。

Saturday, November 01, 2008

Taiwan Int, Documentary Film Festival

So, I'm heading to Taiwan International Documentary Festival (Oct 31 - Nov 9, 2008). MENTAL will be screened twice, and I'll be at the Q&A session each time. I'll be a jury member for the competition section as well. I'm looking forward to seeing Luke Chen, my pal and DP from film school in NY.
http://www.tidf.org.tw/2008/en/programone.php?&uid=102&fcid=7
Asian Network of Documentary Section
Screening dates: Nov 3 at 19:30 and Nov 5 at 18:30

明日から台湾へ行きます。台湾国際ドキュメンタリー映画祭に出席するためです。『精神』の上映は2回あり、質疑応答もあります。
11月3日(19時半)および11月5日(18時半)。僕はコンペ部門の審査員も務めます。NYの映画学校で一緒だった、相棒で撮影監督のルーク・チェンに久々に会えるのが楽しみです。
http://www.tidf.org.tw/2008/en/programone.php?&uid=102&fcid=7